健康に

このブログでは、健康的なライフスタイルをサポートするための情報を提供しています。食事、運動、ストレス管理、睡眠の質向上など、日常生活に役立つ健康のヒントをシンプルに紹介。自分らしい健康管理を実践し、心と体のバランスを整えるためのアイデアをお届けします。健康を大切にすることが、より充実した人生を作る第一歩です。

どのくらいの頻度で運動すればよいのか?

「運動は確かに良いことですが、方法を間違えるとかえって老化を早めることもあります。」

これは、私が老年医学科の医師として過去10年間、患者さんによくお伝えしてきた言葉です。

多くの高齢者は、「運動のしすぎで体を壊すのでは」と心配しつつも、「座りっぱなしも病気の原因になる」と不安を抱えています。
では、実際に高齢者はどのくらいの頻度で運動すればいいのでしょうか?
その背後には、見過ごされがちな健康の真実が隠されています。

2022年の調査データによると、中国における60歳以上の高齢者のうち、約68%が身体活動不足という結果が出ています。
このような人々は、心血管疾患や糖尿病、骨粗しょう症のリスクが大幅に上昇します。

さらに注意が必要なのは、「間違った運動」によって重大な健康リスクが生じる可能性があるということです。
たとえば、不整脈の誘発や転倒による骨折など。軽度でも生活の質に影響を及ぼし、重症の場合は命にかかわります。

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83歳のワンさん(仮名)は、まさにその一例です。

退職後、「健康的な老後」を目指して毎日1時間の早歩きを欠かさず続けていました。
しかしある朝、公園での運動中に突然意識を失い、搬送された結果、脳の血流不足が悪化していることが判明しました。
原因は、彼女の心血管の状態に対して運動強度が合っていなかったことでした。

その日、私たちは彼女の命を救うために、2時間もの時間を要しました。

この出来事はご家族にとって大きな衝撃であり、私自身もあらためて痛感しました――
運動は万能薬ではなく、「やればやるほど良い」というものではないのです。

運動には、老化の遅延、心肺機能の強化、血糖・血脂のコントロール、睡眠の質の向上など多くの利点があります。
しかし、それには「科学的な運動」であることが大前提です。
特に高齢者にとっては、頻度・強度・時間・姿勢のすべてが、命の長さと生活の質に直結します。

私はよくこうたとえます。
若者にとって運動は「燃料の補給」ですが、高齢者にとっては「エンジンの調整」です。

調整がうまくいけば、機械(体)はスムーズに働きますが、
無理をすればオーバーヒートして、故障してしまうのです。

実際、運動のしすぎで健康を害した高齢患者さんも多く見てきました。
たとえば、ある高血圧の元教師は、毎週2時間のバドミントンを続けていたものの、2ヶ月後に狭心症を発症しました。
それは知らず知らずのうちに、心臓の限界を超えてしまった結果でした。

一方で、「年だから動かない方がいい」と全く体を動かさない人もいます。
しかしその結果、筋肉が衰え、関節が固まり、血行も悪くなり、トイレに行くのも困難になるのです。

では、どのくらいの頻度で運動するのが「ちょうどいい」のでしょうか?

世界保健機関(WHO)の2020年のガイドラインによると、
65歳以上の人には、週に少なくとも150分の中等度の有酸素運動、もしくは75分の高強度運動が推奨されています。
これを、週3〜5日に分けて行うのが理想とされています。

ただし、これはあくまで「平均値」です。
本当に重要なのは、自分自身の状態に合った**“黄金の頻度”**を見つけることです。

もし、持病が多く体力に自信がないという方であれば、まずは1日20分の軽い運動から始めましょう。
たとえば、ゆっくりとした散歩や太極拳、軽い体操などが効果的です。
汗をかいたり、心拍数を上げたりする必要はありません。大切なのは「心地よさ」です。

体力に余裕があり、血圧や血糖も安定している場合は、週に3回、30分程度の早歩きをおすすめします。
運動中に「少し息が上がるけれど会話はできる」程度の強度が、中等度の目安です。

高齢者にとって大切なのは、「運動後に気分が良くなる・眠りやすくなる・食欲が増す」といった変化です。

若者のような「脂肪燃焼チャレンジ」に振り回されてはいけません。
高齢者の運動の目的は、生活自立能力を維持すること、そして機能の低下を遅らせることです。

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ここで、高齢者の方にぜひ気をつけてほしい5つのポイントをお伝えします:

早朝・空腹での運動は避けましょう
特に冬の早朝は、血圧が急上昇しやすく、心筋梗塞脳卒中のリスクが高まります。
おすすめの時間帯は、朝食後1時間〜午後4時までです。

運動前のウォームアップをしっかりと
筋肉や関節が硬くなっている高齢者は、準備運動を怠るとケガをしやすくなります。
たとえ散歩だけでも、足踏みや肩回しなどで体を慣らしましょう。

自分に合った運動を選ぶ
走る・ジャンプするなどの高衝撃な運動や、対人競技は避けましょう。
太極拳・水泳・ウォーキング・ダンスなど、ゆるやかで関節にやさしい運動がベストです。
特に水泳は肺機能の向上にもつながる理想的な運動です。

できれば一人ではなく、仲間と一緒に
互いに助け合い、モチベーションにもつながります。
研究によると、グループでの運動は継続率が約40%も高くなるとされています。

運動を“生活の一部”にする
買い物に歩いて行く、友達と一緒に踊る、食後に散歩するなど、日常生活に自然に取り入れることで、無理なく続けられます。

2023年に『中華老年医学雑誌』に発表された研究では、
週に3回以上中等度の運動を行っている高齢者は、認知機能の低下リスクが27%低下し、転倒リスクも32%以上減少することが明らかになりました。

これは単なる統計ではなく、多くの家庭の生活の質を守る“防波堤”なのです。

私が担当したある78歳の元技術者の方は、脳卒中の後遺症で抑うつ状態に陥っていましたが、家族と一緒に毎日少しずつ歩いたり、体操をしたりすることで回復し、2年後には自立生活を取り戻しました。
今では、絵を描くことも再開できるようになったのです。

彼はこう言いました:
「薬じゃなくて、毎日の運動で、自分の体と尊厳を取り戻せた気がする。」

この言葉は、私の心にも深く残りました。
そして、私はあらためて確信しました――

運動とは、命へのもっとも優しい“修復”である。

高齢者は「動けない」のではなく、「むやみに動いてはいけない」のです。

科学的な運動は、体と心の両方に栄養を与えてくれます。
一方、体の声を無視した無理な運動は、健康をむしばむ“消耗”となります。

もし、今日も運動しようか迷っているなら、私はこう伝えたい。

たとえ家の周りを一周するだけでも、それは“未来の自分”へのプレゼントです。

運動は短距離走ではありません。
人生を通して続けていく、長い旅です。

その旅の中で、どうか健康と共に歩み続けてください。
急がず、あわてず、長く、穏やかに。